土曜日の夜

高校生あたりの頃、土曜日の夜に特別な空気を感じていた。まだ完全週休二日制ではなく、土曜日が休日となるのは月1~2日で、他は半ドン、午前中だけ授業があった。

部活動をしているわけではない自分は学校が終わると、駅前の書店で立ち読みをすると家に帰った。そしてもうやることはなかった。本を読むわけでもなく、かといって田圃に囲まれた家の外に行くところがあるわけでもなく、テレビは面白いのがやっていないし、あとはFMラジオで洋楽を聴くくらいか。

高校に通っていた時はあまり勉強していたという実感もない。なんとなく無気力だった。それでも土曜日の夜は何か特別な空気があると感じた。

ソリトン・サイドBやサイエンス・アイ。NHKの番組が好きだった。これらを見ると、ああ土曜日なんだ、明日は学校に行かなくてよいのだと実感した。
土曜日の夜は、静かで透明で、なんとなく期待があって、少しさびしかった。ひと言で言えば、エモかった。

30歳になってから、映画を意識的に見るようになり、良いと感じる映画にはたいていあの時に感じた土曜日の夜の空気が表現されていると思った。日常と非日常の境目にある空気感。あの世でもこの世でもない特別な世界。

高校を出たあとは、予備校、大学、社会人となり、基本的には週休二日だったから、あの頃の空気はもう感じられないのかもしれないと思うと、ちょっと懐かしくもある。

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