舞台「月の獣」を観てきた

2019年12月21日の土曜日、新宿の紀伊國屋ホールで舞台「月の獣」を観劇しました。

今まで演劇は数えるほどしか観たことがありませんが、今回は岸井ゆきのさんが出演されるということでチケットを購入しました。岸井ゆきのさんと言えば、映画「愛がなんだ」でクズ男に振り回されつつ、最後は自分の芯を見つける等身大女子をみごとに演じきった若手女優。あまりに映画「愛がなんだ」が良かったので、生身のゆきのさんも見てみたいというミーハー心で「月の獣」も楽しみにしていました。

「月の獣」は1921年のアメリカが舞台。オスマン帝国によるアルメニア人虐殺事件を背景に、若い夫婦のシリアスな会話劇が繰り広げられます。アルメニア人の夫婦はふたりとも虐殺を生き残った孤児。夫の方が先にアメリカに亡命し、妻は夫に呼び寄せられて渡米、15歳で結婚しました。

陰気で怒りっぽい夫(今でいうパワハラ的な人物)とおさな妻には口論が絶えず、夫は子供が出来ることを心待ちにしますが、なかなか妊娠しません。それでもふたりの若者はふたりの関係を模索してゆきます。共に家族がホロコーストの犠牲者となっていることが、今の夫婦の関係にも重い影を落とし、生き延びた者に課せられた苦しみからなかなか自由になれません。

そんななか、妻は孤児を家に招き入れ、夫もやがてその男児を受け入れ養子にすることにします。ふたりだけの閉じた世界が、孤児を基点にして広がってゆくところで物語は終わります。

映画のなかの岸井ゆきのさんは、可愛いんだけど絶世の美人という役柄ではなく、設定上は「普通ルックスの女子」を演じることが多いです。しかし舞台上のゆきのさんは、オーラが半端ない美人でしたね。女優という存在の格の違いを見せつけられました。舞台での演技においては、早口なんだけど滑舌が良く聞き取りやすい。ときおり低めの声で独白し、その重い台詞を吐く時は、指先までもが震えていたりする。劇場内の空気を岸井ゆきのという女優が構築しているかのように感じました

夫役の眞島秀和さんはさすがの安定感があり、繊細なゆきのさんの演技を根っこのところで支えます。孤児役の子役と老人役のふたりの演者も、物語の奥行きを作っていく演技を着実にこなします。

今まであんまり演劇を見たことがないので、どういう風に言葉にしていいか分からないのですが、本当に観て良かったと思いました。生身の人間が目の前で演じているという演劇ならではの緊張感、舞台という抽象化された空間での演技を解釈することの想像力、舞台上のどこに視点を持っていくかという映画にはない自由さ。演劇って面白いなあと実感しました。チケットが安くはないので、映画のように気軽に観に行くわけにはいきませんが、また劇場に行きたいと思ったのでした。

それにしても、岸井ゆきのさんの女優魂を五感で感じることができてよかった。生身の女優さんを目にするといつも圧倒されてしまいます。

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