自分と短歌

初めて短歌を作ったのは、大学2年生の時だったと思う。神道学科に通っていたので、明治神宮で実習があり、その実習中に短歌を一首つくって、何かの賞に応募させられた。特に賞を取ったりはしなかったし、そもそもそれまでに短歌を「読」んだことなんて、一冊もなかった。

大学4年生の卒業間近の時期、NHKで「ケータイ短歌」というモノを募集しているらしいと聞き、さっそく一首作って送ってみた。人生で2首めの短歌である。放送日が近くなると、携帯電話に見知らぬ番号から電話があった。応募してくれた短歌が面白いので、スタジオ収録に来て欲しいとのこと。

たしか土曜日の夜だったと思うけど、渋谷のNHKまで行った。入口でディレクターが待っていて、放送局内の迷路のような道をくぐって、他の参加者も待っている部屋まで案内してくれた。「ケータイ短歌」がラジオでレギュラー番組化するのを記念して、応募してくれたリスナーの何人かをスタジオに呼ぶ企画なのだという。部屋には他に十人少しの人がいて、短歌や小説の話などをしていた。

最初にディレクターから電話をもらったとき、応募した短歌の説明を求められるとともに、好きな歌人はいますか、とも尋ねられた。僕はひとりも名前が出てこなかったし、歌集を買ったことも読んだことすら全くなかった。だから、待合所での会話にも、夕食はいつも松屋で食べることにしている女子大生の話にしか反応できなかった。

収録では、NHKのアナウンサーとふかわりょう氏と穂村弘氏がテーブルに座り、それをリスナーが取り囲んだ。僕は穂村氏の名前すら知らない状態だったが、氏の応募された歌に関するコメントに、なるほどなるほどと相槌をうってしまい、短歌ってけっこう面白いかもしれないと思いはじめた。

4月から「土曜の夜はケータイ短歌」というラジオ番組が始まった。僕は毎月応募し、ほぼ毎月、自分の歌を取り上げてもらえた。12月のクリスマス特番では自分ひとりだけまたNHKに行って、自作短歌を朗読し、その録音が放送されたりしたし、歌手のより子氏が僕の作った短歌に曲をつけてくれたこともあった。

それから僕は歌集を買い求め読み、もっと本格的にやろうと思って、結社に入ったりもした。大学院にいた2年間は短歌に夢中になっていた。しかし学校が終わり、いよいよ社会に出る時期になった時、ぷつりと情熱が切れてしまった。結社もやめた。短歌も作らなくなった。

今でもときどき歌集を読んだりすることはある。数年前も少し短歌を作ってブログに出したりもした。しかし小説のように短歌が自分にとっての「ワーク」とはならなかった。なぜかはよく分からない。まあ端的には才能がなかっただけだと思うけど、ぎゃくになぜ小説なら結果も出ないのに書き続けることができるのかも謎である。

ちなみにNHKに呼ばれた最初の短歌がこれ。

すれ違う君と目があうその刹那 僕は勝手に結婚をする

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